5月28日~6月1日に台北にて開催されたComputex 2019と、その前日に開催されたQNAP Partner Dayに行ってきました。
この数年の注力分野である "NAS" でないソリューションが目白押しのブースでした。
ネットワーキングソリューション ― Guardian
Guardian QGD-1600Pは、ひとつの筐体にNASの機能とPoEスイッチの機能を組み合わせたエッジコンピューティング分野の新製品です。
1月にラスベガスで開催されたCES 2019にて初お披露目(多分)、日本では、今年4月のAI EXPO、5月のクラウドコンピューティングEXPOでも展示されていました。
NASというよりアプリケーションサーバーと表現するのが適当で、ファームウェアであるQTSにアプリケーションを組み込んで、拠点分散型でデータ処理を行います。QTSは仮想マシンやコンテナの組み込みができるので、どのようなアプリケーションでも動かすことが可能です。
適用事例として監視ソリューションがよく紹介されていますが、さまざまなIoTアプリケーションでの利用が期待されます。
QNAPの説明では、出荷開始まではもうしばらくかかるようです。
QVR Pro & QVR Face
QNAPの監視録画ソリューションのQVR Pro + 顔認識AIソリューションのQVR Faceの展示です。
QVR Faceは、Intel OpenVINOツールキットとIntel VAS AIフェイスモデリングによる顔認識アプリケーションで、解析された顔情報や警告イベントをQVR Pro Clientで受信したり検索したりすることができます。
QVR Faceのリリースもしばらく先になりそうです。
IoTソリューション
QNAPのIoT開発プラットフォームであるQIoT Suite Liteの後継となる、QIoT Suite 2.0が(おそらく)初披露されました。
QIoT Suiteは、ドラッグアンドドロップでフロー作成できるルール エンジンのNode-RED、カスタマイズ可能なダッシュボードのFreeboardが組み込まれた簡易IoT開発プラットフォームで、クイック セットアップ ウィザードを使用してIoTアプリケーションを短時間で開発できます。
QIoT Suite 2.0は、インダストリアルIoT (IIoT)に最適化されたOPC UA (Object Linking and Embedding for Process Control、Unified Architecture)通信規格に対応し、産業用機器とのデータ交換性が飛躍的に高まります。
ブースでは、温度センサーや光センサーを使って、状態の変化に対してブザーを鳴らしたり、ドアのロック/ロック解除などを行うなどのデモンストレーションを実施していました。
エンタープライズ・ストレージ
(写真がイマイチですが) デュアルコントローラーモデルの新製品 ES1686dc (Intel Xeon Dシリーズ搭載、16ベイ)とQES 2.1が紹介されました。
オールフラッシュストレージに最適化されたQES 2.1では、QNAP独自のWrite Coalescingアルゴリズム(Coalesce : 合体/結合する)により、バッファを活用してランダム書き込みをシーケンシャル書き込みに変えることで、パフォーマンスを向上し、SSDの寿命を伸ばします。ソフトウェア定義型のオーバープロビジョニング(QTS 4.3.5で追加された機能)の追加や、重複排除機能の強化も行われています。
バックアップ & インテリジェントストレージ
QNAPの統合バックアップアプリケーションであるHybrid Backup Syncの最新バージョンが "HBS 3" という名称でリリースされました (現在はパブリックベータ版)。
新たに追加されたオンライン重複排除機能 "QuDedup" は、メインNAS (ソース)側でブロックベースの重複排除を行うことで、バックアップに必要な帯域幅、処理時間、バックアップNASに必要なストレージ領域を低減させることができます。
バックアップ先にはQNAP NASのほかにクラウドストレージを利用することも可能で、より柔軟にバックアップ計画を立てられます。
また、QNAPは、ストレージのテストツールを提供するULINK Technology Inc. (ULINK)との提携による、AIベースのドライブ解析と故障予測のサービスを発表しました。このサービスにより、ドライブの故障の前兆を早期に発見し、システムのダウンタイム、業務/サービスの停止のリスクを抑えることができます。
今後のリリースになりますが、年間ライセンスの形で販売されるようです。
ネットワーキングソリューション ― IEI Puzzleシリーズ
こちらはQNAPの親会社であるIEIが提供するネットワーキング製品で、SD-WAN (ソフトウェア定義型WAN)、VNF (仮想ネットワーク機能)、uCPE (UUniversal Customer Premise Equipment)、エッジコンピューティング、ホワイトボックススイッチといったキーワードで紹介されています。
最初に紹介したQNAP Guardianのベースとなったプロダクトで、CPUブランド・スペック、ポート構成などにより数多くのバリエーションがあります。
詳しい説明は製品 カタログ をご参照下さい。
その他の新製品
昨年はNASのモデルチェンジが多数あったこともあり、今年はガジェット類など、小ぶりな新製品が目立ちましたが、「えっ?」となる製品が紛れていたりします。
10GbE対応スイッチ
現行の12/8ポート10GbEスイッチに加え、アップリンクが10GbEのスイッチがリリースされます。
- QSW-308S : 3 x 10GbE SFP+、8 x 1GbE
- QSW-308-1C : 2 x 10GbE SFP+、1 x 10GbE SFP+/RJ-45 コンボ、8 x 1GbE
SSDアダプター
SSD 2枚を1枚に変換する「ニコイチ」アダプター、RAID 0/1にも対応します。
- QDA-A2AR : 2.5インチ SATA SSD 2枚を3.5インチ SATA SSDに
- QDA-A2MAR : M.2 SATA SSD 2枚を2.5インチ SATA SSDに
ファイバー・チャネルカード
ひっそりと並んでいましたが、QNAP NASがFCに対応します (QTS 4.4.1以降)。
- QNA-32G2FC : 2ポート 32Gb ファイバー。チャネル(FC)カード
こんなものも
WOLをリモートで制御するためのアダプターです。
- QWU-100 : Wake-on-LAN (WOL)アダプター
まとめ
今回の展示は、QNAPビジネスの中心であるNAS・ストレージ分野よりも、IoT、AI、ネットワーキング分野の展示が目立ちました。
QNAPがIoTのメッセージを最初に出したのが約4年前、AIは1年半前、ネットワーキングは2年前だったと思います。
メッセージだけでなく、具体的な製品やソフトウェアをリリースし、IntelやAWSとの協業にも力を入れるなど、QNAP/IEIの本気度が伝わる出展でした。
2019/6/11 KH